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最高裁判所第三小法廷 昭和50年(オ)715号 判決

主文

理由

上告代理人吉田朝彦の上告理由第一点について

原判決及び第一審判決に徴すれば、原判決が所論のような判示をしていないことが認められるから、所論は理由がない。論旨は、採用することができない。

同第二点について

所論の点は傍論に対するものであつて、その当否は原判決に影響を及ぼすものではない。のみならず、不動産所有者がその所有不動産の所有権移転、抵当権設定等の登記手続に必要な権利証、白紙委任状、印鑑証明書を特定人に交付した場合においても、その書類が利用されたことによつて不動産所有者が民法一〇九条によりその効果を受けるのは、右所有者から直接書類の交付を受けた者が、右書類を利用し、自ら不動産所有者の代理人として任意の第三者とその不動産処分に関する契約を締結した場合、又は不動産所有者が右書類を何人において行使しても差し支えない趣旨で交付し、不動産所有者から直接交付を受けた者が更にこれを第三者に交付して、その者がこれを利用して不動産処分に関する契約を締結した場合にかぎられるものと解するのが、相当である(最高裁判所昭和三八年(オ)第七八九号同三九年五月二三日第二小法廷判決・民集一八巻四号六二一頁参照)。したがつて、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論引用の判例は、事案を異にし本件に適切ではない。論旨は、採用することができない。

同第三点について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

(裁判長裁判官 高辻正己 裁判官 関根小郷 裁判官 天野武一 裁判官 坂本吉勝 裁判官 江里口清雄)

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